★【特別対談】合資会社西岡勝次商店×水産加工業向け売上管理システム~共同開発秘話とその導入効果を語る~
雑節の生産量日本一を誇る熊本県天草市牛深町で、煮干し類・節類の製造・販売を行っている合資会社西岡勝次商店さまへインタビュー。当社と共同で開発した「水産加工業向け売上管理システム」をご利用いただいています。今回は当社のシステム開発者と共に訪問し、開発当時のエピソードや導入後の効果、システムの魅力について語っていただきました。
合資会社西岡勝次商店
3代目代表取締役 西岡勝太郎氏
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九州デジタルソリューションズ株式会社
コンサルティング営業部 松本祥治
目次
1.「水産加工業向け売上管理システム」とは?2.手書きの帳面を持ち歩く日々…システム導入で業務の効率化へ
3.共同開発で生まれた理想の管理システム、データ活用でスマートな経営を実現
4.DXで描く水産加工業の未来、西岡勝次商店様の新たな挑戦
5.開発担当者の一言
1、「水産加工業向け売上管理システム」とは?
水産加工業向け売上管理システムは、水産加工品の仕入れから販売までのプロセスを効率的に管理し、事業全体の収益向上を支援するシステムです。
仕入れロットごとの粗利・歩留まり管理をはじめ、製造、販売、在庫など、水産加工業に関わるあらゆるデータを一元的に管理することができます。これにより、データの整合性を保ち、正確な経営判断を支援します。
また、インターネット環境さえあれば、いつでもどこからでもアクセス可能で、場所や時間に縛られることなく業務を進めることができ、手作業によるデータ入力や集計作業を大幅に削減、業務全体の効率化を実現します。データはクラウド上に保存されるため、紛失のリスクを軽減しながら、お客さまのニーズに合わせた個別の機能開発が可能です。
仕入管理 | 仕入データの一元管理、仕入ロット管理、在庫管理との連携、発注管理、仕入統合 |
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製造管理 | 生産計画の立案、進捗管理、製造工程の記録、歩留まり管理 |
販売管理 | 売上実績管理、受注管理、請求書発行 |
在庫管理 | 商品の在庫情報管理 |
その他 | データ分析機能、レポート作成機能、モバイル対応 |
2、手書きの帳面を持ち歩く日々…システム導入で業務の効率化へ
ー水産加工業向け売上管理システム導入へのスタートは2015年ですね。色々とお話をお聞きして開発に着手したと思いますが、導入のきっかけになった当時の課題やどのような悩みをお持ちだったか教えていただけますでしょうか?
西岡氏:導入前は、仕入れ・売上・在庫の情報を手書きで帳面に書いて、どこへ行くにも持って行かないといけませんでした。紙なので、仕事すればするほど帳面の量が増えるんです。重くてかさばるし、持ち運ぶのはとてもストレスでした。魚の昨年の仕入れ値や加工量などを調べたいと思っても、帳面だと知りたい情報がすぐに見つからない、何ページも遡って探すなんてことも多々ありました。毎年実施される国の調査対応も大きな負担でしたね。サバの年間加工量や販売先、歩留まりなどの詳細なデータを、手書きの帳面から抽出して集計する作業は非常に手間がかかっていました。帳面は私だけが管理をしていたため、他の従業員との情報共有が難しく、不在時には業務が滞りがちになっていました。そのため、外部への営業活動や視察の参加機会も減り、取引先との関係構築や新たなビジネスチャンス獲得まで逃しているという状況でした。取り扱う魚の種類が増えるにつれて、情報管理の複雑化が課題となり、業務効率の低下を招いていると感じたため、これらの課題を解決するべく九州デジタルソリューションズにご相談をし、システム導入を検討することになりました。
ーシステム導入後の効果としては、その辺りの悩みは解消されましたか?
西岡氏:そうですね。システム導入後は、データ確認のスピードが格段に向上しました。国の調査対応も、システムの数値を貼り付けるだけで済むようになり、作業効率が大幅にアップしましたね。例えば、「サバの仕入れ価格を確認したい」といった場合も、以前は会社まで出向いて帳面からデータを探さなければなりませんでしたが、今は外出先からでもスマートフォンで簡単に確認できるため、非常に便利です。 過去の販売実績や顧客情報などから適切な商品を提案したり、購買時期のアドバイスを行ったりすることが可能になり、顧客からの注文対応も全体的にスムーズになりました。また、仕入れから販売までの情報が紐づけられているため、商品の産地証明書も簡単に探し出すことができます。 紙の管理からシステムへ移行したことで、データ消失のリスクが軽減され、安心して業務に取り組めるようになりました。さらに、データに基づいた客観的な情報提供が可能になったことで、顧客からの信頼度も向上したと感じています。
松本:開発担当としては、非常にありがたいお言葉です。ありがとうございます。貴社の業務に貢献できていることを大変嬉しく思います。アナログだった情報をデータ化し、その場で確認・活用できるのは確かに大きなメリットですよね。
3、共同開発で生まれた理想の管理システム、データ活用でスマートな経営を実現
ー九州デジタルソリューションズとの共同開発の中で印象に残っていることはありますか?
西岡氏:水産加工業は専門性が高いため、正直システム開発への難しさを感じていました。特に、歩留まりの計算は概念が複雑で、なかなか理解してもらえないのではないかと心配していました。しかし、松本さんには粘り強く取り組んでいただき、非常に精度が高く使いやすいシステムに仕上げていただきました。今では、このシステムなしでは業務が成り立たないほどです。
松本:そうおっしゃっていただけて、大変嬉しいです。当初、私は水産加工業の知識が全くなく、そんな分野のシステム開発には正直苦労しました。特に、歩留まりの計算は非常に難解で、何度も西岡さんにご説明いただきながら、ようやく理解することができました。データサンプルや資料を作成し、何度も試行錯誤を繰り返すことで、徐々にシステムの精度を高めていきました。システム開発よりも、むしろ水産加工の業務内容や歩留まりの概念を理解することに時間がかかった感じでしたね。しかし、この経験を通して私自身の知識も深まり、より良いシステム開発に繋がったと感じています。
西岡氏:お取引先の方々にこのシステムをご紹介すると、皆さん非常に驚かれます。「うちも導入したい」という声もよくいただきます。場所や時間に縛られず、どこからでもデータを確認できる点が好評ですね。余談ですが、最近新たにタブレットを購入したので、重いパソコンを持ち運ぶ必要もなくなり、非常に便利です。CSV形式でデータをエクスポートして、自由に加工できる点も重宝しています。サバの価格推移を分析する際などにも役立っています。
松本:ありがとうございます。これまで西岡様のご要望をもとに、システムを少しずつ改善してまいりました。今後もより使いやすく機能的なシステムになるよう、努めてまいります。
西岡氏:このシステムには、まだまだ可能性を感じています。現在の満足度は90%ですが、残りの10%を埋めるために、松本さんには今後も積極的に相談させていただきながら、より完璧なシステムへと進化させていきたいと考えています。
4、DXで描く水産加工業の未来、西岡勝次商店さまの新たな挑戦
ーDXへの取り組みはこれからも継続して取り組まれると思いますが、今後会社として取り組もうとしているもの、やってみたいことなどありましたら教えてください。
西岡氏:熊本県天草市の牛深地域は、雑節の生産量日本一であるにも関わらず、その知名度がまだまだ低いのが現状です。そこで、SNSやホームページを活用したPR活動や、何かユニーク企画を通じて、まずはより多くの方に雑節を知っていただきたいと考えています。例えば、工場見学に来た方にSNSでの発信を促し、投稿してくれた方には雑節をプレゼントするなどといった企画を検討してるところです。現在ホームページも準備中で、完成次第本格的なPR活動を開始しようと思っています。
松本:西岡様は、以前からDX化に積極的に取り組まれており、IoTやWebカメラなどを活用されていますよね。他の水産加工業者と比較しても、DXの導入が非常に進んでいると感じています。
西岡氏:そうですね。DXの分野で行くと、AIを活用した品質評価システムに興味があります。例えば、サバ節の写真をAIに読み込ませ、その品質を数値で評価するようなシステムです。すでにマグロの品質評価にAIが活用されている事例がありますが、雑節や鮮魚にも同様のシステムを導入できれば、品質管理がより効率化されるのではないかと考えています。
松本:AIは、画像認識の分野で高い精度を発揮します。良質なサバ節の写真を大量に学習させることで、品質評価モデルを構築することは十分に可能ですね。
ー最後に「水産加工業向け売上管理システム」はどういう方におすすめしたいですか?
西岡氏:農業や水産といった一次産業に従事されている方々におすすめしたいですね。特に歩留まり計算が重要な水産加工業においては、このシステムは非常に役立つと思います。データがシステム上にどんどん蓄積されていくので、過去のデータ分析はもちろん、今後の経営計画検討に役立てることができる点も大きな魅力です。このシステムが、多くの水産加工業者の方々に活用され、業界全体の生産性向上に貢献できれば嬉しいです。
松本:貴重なご意見ありがとうございます。現在このシステムは、個々の企業向けにカスタマイズして提供している形ですが、将来的にはより多くのお客様にご利用いただくため、大規模プラットフォーム化・サブスクリプション型のサービスとして提供することを検討しているところです。このシステム開発は、西岡さまのご尽力なしでは実現できなかったと強く感じています。本日はお忙しい中このようなお時間をいただき、ありがとうございました。
5、開発担当者の一言
お客様と共同でシステム開発に取り組むのは、当社としても初めての経験でした。クラウド開発のノウハウがまだ十分ではなかったため、開発初期は試行錯誤の連続でしたが、西岡様からは常に前向きなご意見をいただき、大きな力となりました。今回の対談の中で、「やりたいことの90%は実現できている」というお言葉をいただいたので、今後は残りの10%を達成し、さらなる満足を提供できるよう、機能改善やサポートに尽力してまいります。「水産加工業向け売上管理システム」の共同開発を通して、水産加工業の奥深さや、お客様との信頼関係の大切さを学びました。熊本から約4時間という牛深への訪問も貴重な思い出となりました。これからもお客様ファーストで業務に励んでいこうと思います。(松本)